アーサー・C・クラークはイギリスの著名なSF作家です。そして彼の代表作とも言えるのが「幼年期の終わり」です。
私自身これまでSF作品はまったく興味がなかったのですが、マイクロソフト日本法人元社長の成毛眞さんが書籍の中で紹介されていたので読んでみることにしました。
面白くなければすぐに読むのをやめようと思っていましたが、結局2日ほどで全部読むくらいに熱中しました。
私のようにSFには特に関心がないという人にもおすすめできる本だと思ったので、今回はどんな感想を持ったのかなどをお伝えしていきます。ネタバレを含むので、読み終わった人たちに共感してもらえたら嬉しいです。
書籍紹介「幼年期の終わり」
今回読んだのはアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」です。訳者は池田真紀子さん。訳がいいのか、本文がいいのか、(どちらもかな)非常に読みやすかったので、かなりおすすめです。
本書の構成
幼年期の終わりは3部構成になっています。
- 1部 地球とオーヴァーロードたち
- 2部 黄金期
- 3部 最後の世代
第1部では、オーヴァーロードという謎の宇宙生命体が地球に現れ、徐々に人類を管理していきます。
第2部は、オーヴァーロードの支配、管理のもと繁栄を享受していた人類の生活を描きます。
そして第3部では、なぜオーヴァーロードたちが地球に現れたのか、なぜ管理、支配してきたのかの秘密が明かされます。
ここからはネタバレを含んでいきますのでネタバレOKな方のみお進みください。
これはカレランのお話
カレランとは、地球人が「オーヴァーロード」と呼んだ生命体の1人です。地球総督の任務を負い、人類ともっともコミュニケーションをとった宇宙生命体だと言えます。
幼年期の終わりを読んでみて、主人公は誰かと聞かれれば私はカレランだと答えるかなと思います。地球人は3世代に渡ってキャラクターが入れ替わりましたが、カレランはずっと物語の主軸となっていました。
最初は得体の知れなかったカレランですが、地球人との交流を通して彼の置かれた立場や背景が見えていき感情移入してしまいます。最後の方では、同情さえしてしまいました。
オーヴァーロードに同情する理由
オーヴァーロードであるカレランに同情さえ抱いてしまった理由は、彼らには未来がなく終わりがないという点からです。
最初は「地球の侵略者と人類との戦い」といったよくある勧善懲悪の話かと思ったのですが、話を進めるにつれてじつはオーヴァーロードは自身の上位の存在であるオーヴァーマインドから命じられて任務を遂行しているに過ぎないことがわかります。
しかも、人類はオーヴァーマインドとの融合という将来があるのに対して、オーヴァーロードたちには進化という選択肢がなく、このままオーヴァーマインドに仕えるしか道がないのです。
ここで、オーヴァーロードたちの自分たちの種に対する葛藤を知ります。
保護監督という立場の哀しさ
カレランは終始保護監督という役に徹していました。150年以上もの間、地球人を観察し、接触し、管理し、繁栄のサポートを続けた結果、人類はオーヴァーマインドに吸収され、地球という星も跡形もなく消えて無くなります。
作中では、カレランは地球の他にも5つの星を担当したと言っていたと思います。観察し続け、わずかながらも親愛の気持ちを持っていた(ように見える)にも関わらず、それがすべて無になるというのは一体どんな気持ちだったのだろうと、カレランの虚しさを想像してしまいます。
あるいは、もしかしたら何の感情も抱いてなかったのかもしれませんが。
人間と家畜のメタファー
このようなカレランと地球人との関係は、人間と家畜の関係のメタファーだと言えるのではないか。私自身はそう考えています。
現にカレランは、地球に来たあと、戦争と飢餓と病を無くしました。それは人類に繁栄をもたらしました。作中では明言されていませんでしたが、カレランの登場によりかつてないほどに豊かな世界で人類は多くの子孫を残したと考えられます。
おそらく、オーヴァーマインドから一定数の人口を確保するように求められていたのではないでしょうか。
現実世界に置き換えてみると、牛や豚、鶏を家畜化し、自分たちの都合で増やし続けてきた人間の業を想起させます。人は家畜を食べるために、食物を与え、肥やし、子孫を残させてきました。
ユヴァル・ノア・ハラリは、サピエンス全史で工業的家畜化を厳しく批判していますが、幼年期の終わりについても同じように人間と家畜の関係に対する問題提起があったのではないかと私自身は感じています。
まとめ
幼年期の終わりが書かれたのは、なんと1950年代。今から約70年も前の小説です。その後、世界情勢に応じて手を加えられましたが、大筋は変わっていません。
それだけ昔に、現代にも通じるような世界観を作り上げたアーサー・C・クラークには驚きと感動の念が溢れます。
ちなみに今回の感想はあくまでも私自身が感じたことです。人によっては様々な見方ができる本だと思います。ぜひ、みなさんと感想を分かち合いたいものです。
それでは今回も最後までご覧いただきありがとうございました。この記事がどなたかと共有できたら嬉しいです。
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