ユヴァル・ノア・ハラリ著ホモ・デウス「無用者階級」とは?21世紀の新労働者階級

今回は、ユヴァル・ノア・ハラリという歴史学者が書いた『ホモ・デウス』という本をご紹介します。これまでの人類史を振り返り、これからの人類はどのように発展していくのかということを述べるという内容なのですが、非常に面白かった(というか衝撃的だった)ので、共有したいと思いました。

詳しくは本書を読んでいただきたいのですが、書籍中に「21世紀の新しい労働者階級」という構想がありました。ハラリによると、未来の人類には「働きたくても働けない階層」が出てくるというのです。

ユヴァル・ノア・ハラリ先生が「無用者階級」と名付けた、この新しい人類の階層について今回は掘り下げてみます。

ユヴァル・ノア・ハラリ著『ホモ・デウス』とは

ユヴァル・ノア・ハラリは、イスラエルの歴史学者。7万年に及ぶ人類の歴史を語った『サピエンス全史(上下)文明の構造と人類の幸福』という書籍が2016年に出版され、世界的ベストセラーとなりました。

『ホモ・デウス』は『サピエンス全史』をさらに発展させた内容で、続編だとも言われています。サピエンス全史が人類の歴史という過去を振り返った本であるとすると、ホモデウスは人類の未来を描いたものだと言えます。テクノロジーという武器を手に入れた人類が、今後どんな未来を歩んでいくのかを提言しています。上下巻に分かれており、1冊だけでも十分な量があります。

2019年現在、AI技術が急速に発展し、AIが人間の知能を超えるというシンギュラリティが起きるとも噂される今、予測不能なこの状況に対し不安を抱えている人も多いかと思います。

ホモ・デウスは、そうした私たちの不安を拭うヒントになるものだと思いました。詳しくはぜひ本書を手に取っていただきたいのですが、時間がない方のために、本書の一部分である「新労働者階級」という考え方を取り上げたいと思います。

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これまでの労働者階級

新労働者階級を説明するために、まずは現在の階級がどのようになっているのかを説明する必要があります。現在の経済世界を支配しているのは基本的に「資本家」と「労働者」の2種類のみです。この構図は19世紀のイギリスに端を発する産業革命がきっかけとなり生まれました。

まず資本家は商品を生み出すシステム(生産設備)を作ります。そして労働者を雇います。労働者は

  • 決められた作業を
  • 決めれた手順で
  • 決められた時間内に

行うだけで、毎月決まった額の報酬(月給)を得ることができます。

資本家サイドで考えると、労働者によって生み出された商品を売り、利益を得て、余剰の利益をさらに仕組みに投資し、利益を拡大することができます。必要なのは、一定時間、指定場所で、作業をすることができる人材です。

資本家は、時間を提供してくれる人を確保できれば、同じ品質の商品を大量に生産できるようになりました。アメリカのT型フォードという自動車の生産技術はこの仕組みそのものです。当時は、急速に馬から自動車へと変遷し、新しい雇用形態が生まれたと考えられます。

21世紀の新しい労働者階級「無用者階級」

「資本家は仕組みを作り、労働者は単純作業をこなすことで毎月決まった額の報酬を得ることができる」

19世紀以降の人類は、この構図により発展を遂げてきました。ところが、21世紀はこの構図からはみ出る人が出てくるとハラリは言います。

新しい労働者階級が生まれ、「雇用不可能な人々」が出てくるというのです。「雇用できない人」とはどういうことなのでしょうか?

本から該当箇所を抜き出してみます(太字は筆者によるもの)。

二十一世紀には、私たちは新しい巨大な非労働者階級の誕生を目の当たりにするかもしれない。経済的価値や政治的価値、さらには芸術的価値さえ持たない人々、社会の繁栄と力と華々しさに何の貢献もしない人々だ。この「無用者階級」は失業しているだけではない、雇用不能なのだ。

引用:ホモ・デウス「第9章 知能と意識の大いなる分離」より

それぞれの文脈を解説します。

前提として、ハラリは世界に目を広げたとき、経済活動をする人、政治活動をする人、創作活動をする人の3種類がいるとしています。

「経済的価値」というのは経済活動により価値を生み出す人のこと。政治的価値とは政治家となれ世の中を率いる人、芸術的価値とはアートを生み出し人々に感動を与えることができる人のことです。

この3種類のうち、どれにも当てはまらない人は、雇用できないと言います。

雇用不能とはどういうことか?

ここで、雇用不能について考えてみましょう。

現在の日本で想像してみると、心身共に健康である人ならば、例えばコンビニやカフェのアルバイトなどで稼ぐことができます。これは立派な経済的価値のある人です。

ですが、ハラリが考えているのはAIによるテクノロジーが普及した後の世界。この世界では、人を雇うよりもロボットを使った方が圧倒的にコストが安く、かつ質も良くなるため、資本主義社会において「人を雇用する理由がなくなる」のです。

実際現在においても、AIによる仕事の代替は進んでいますよね。レジやコールセンターなどをAIやロボットに置き換えることで、コンビニや銀行は人件費を大幅に削減できます。

そうした背景を考慮すると、将来的にはAIが複雑な仕事を行えるようになり、一定数の人間は一時的に失業するのではなく永続的にどこも雇うことができなくなるのです。

コンピューターアルゴリズムに代替される職業とは

ハラリは著書の中で、オックスフォード大学の研究者カール・ベネディクト・フレイとマイケル・A・オズボーンが出版した「雇用の将来」を紹介しています。

「雇用の将来」では、今後20年間のうちにコンピューターアルゴリズムにとって代われる職業とその可能性を査定しました。内容はこちらの通りです。

◾️2033年までに仕事を奪われる可能性がある職業

  • 電話セールスマン、保険業者…99%
  • スポーツ審判員…98%
  • レジ係…97%
  • レストランの調理師…96%
  • ウェイター…94%
  • 弁護士補助員…94%
  • ツアーガイド…91%
  • パン職員…89%
  • スクールバスなどの運転手…89%
  • 建設作業員…88%
  • 獣医助手…86%
  • 警備員…84%
  • 船員…83%
  • バーテンダー…77%
  • 公文書保管員…76%
  • 大工…72%
  • 救助員…67%

この結果で興味深いのは、難易度の高い職業として認識されている弁護士補助員や獣医助手までもが、2033年にはロボットに取って代わられている可能性が高い、と予想されている点です。

じつは、高度な知識を必要とする職業こそAIの得意分野なのだそう。これはAI研究の第一人者でもある新井紀子先生の「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」でも同じことが解説されています。

「働きたくても働けない」という時代を前に私たちがすべきこととは

「無用者階級」が生まれる前に、私たちができることはなんでしょうか。

これに関しては明確な答えはありません。ハラリ先生はこのように言及しています(太字は筆者によるもの)。

2030年や40年に求人市場がどうなっているのか私たちにはわからないので、今日すでに、子供たちに何を教えればいいのか見当もつかない。現在子供たちが学校で習うことの大半は、彼らが40歳の誕生日を迎える頃にはおそらく時代遅れになっているだろう。

従来、人生は二つの主要な部分に分かれており、まず学ぶ時期があって、それに働く時期が続いていた。いくらもしないうちに、この伝統的なモデルは完全に廃れ、人間が取り残されないためには、一生を通して学び続け、繰り返し自分を作り変えるしかなくなるだろう。

大多数とは言わないまでも、多くの人間が、そうできないかもしれない。

引用:ホモ・デウス「第9章 知能と意識の大いなる分離」より

将来がどうなるのかは、不確定要素が多くすぎて、ハラリ先生もわからないと言います。だからこそ、「学び続ける必要がある」とも。

これまでの人生モデルは、20歳前半までに勉強し、残りは仕事をするというサイクルだったのですが、今後は100歳まで生きるのが普通になります。そこで、これからは人生の間で何度も学習する機会を設けることになります。この辺りの考え方はぜひ「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略」を読んでみてください。

まとめ

「無用者階級」なんて言われてしまうと、少し悲観的な気持ちになりますが、実際にはそこまで考え込む必要はないのかなと思っています。

確かに、時をみて自分のスキルなり、知識なりをアップデートする必要はありそうですが、それは今に始まった事ではないですよね。

あと、働き口があるかと、その人が幸せかどうかとは別問題だなとも思います。例え働いていなかったとしても、2033年にはベーシックインカムなどのさまざまな制度が整い、収入を得ずとも楽しく生活できる基盤ができているかもしれません。世界の一部地域ではすでに、ベーシックインカムの社会実験も導入されています。

大事なのは、自分がどんな未来を生きたいかだと思うので、もしホモ・デウスを読んで方向性の修正が必要だと感じれば少し意識したり、行動したりするだけでも違ってくるのかなと思いました。

以上、ホモ・デウスから新しい労働階級についてご紹介しました。興味を持った方はぜひ一度読んでみてください▼

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