類人猿ボノボの動画まとめ<英語を習得した天才カンジくんができることと今の様子>

ユヴァル・ノア・ハラリ先生の「ホモ・デウス」を読んでいたところ、ボノボという類人猿がいることを知りました。ボノボの生態について気になったので調べてみたところ、言語を理解するとても高い知能を持つことがわかりました。言語を理解するボノボの名前は「カンジ」くんです。なんと、このカンジくんは1000以上の英単語を理解することができ、600ほどの文章を理解し、その通りに行動することができるのです。

ご紹介するのは、カンジくんについての動画です。これを知れば「動物は言葉が通じない」という概念がひっくり返ることでしょう。非常に興味深い動画なので、ぜひ見ていただきたいです。時間がない方用に、内容を文章でざっくりと説明しているので、さらっと読んでみてください。※()内は動画の該当時間。トップ画像はイメージです。

人の会話を理解し、行動できる。類人猿ボノボのカンジくん

こちらの動画は、アトランタのジョージア州立言語研究センターにいる、類人猿ボノボのカンジくんの様子を取材したNHKスペシャルの一部です。

冒頭から、女性博士と一緒にバーベキューをするカンジくん。博士の指示に従い、枝を集め、ライターを器用に使い、火をつけバーベキューを楽しみます。火を怖がらないことにも驚きますが、まだまだカンジくんのすごさはほんの一部分です。

他にも、一緒に料理をしたり(7:01)、1000語以上の英単語を耳で聞き理解していたり(17:00)、とても高い知能をもつことが動画で紹介されています。

「単語を理解できる動物は他にもいますが、人間の会話を理解できるのはカンジとその妹のパンバニーシャだけ」なのだそう。

こちらの動画の内容をざっくりまとめてみます。

チンパンジーに似ているけど違う。類人猿ボノボとは

ボノボとは、姿形はチンパンジーに似ているものの、実際には全く別の種です。チンパンジーよりひとまわり小さく、かなり長い時間二足歩行ができます。かつてはチンパンジーに似ていることからピグミーチンパンジーと呼ばれていましたが、ここ2,30年で全く別の種類だとわかりました。

集団で行動し、非常に思いやりがあり、争いを好まず、食料なども分かち合う文化をもちます。アフリカ大陸のコンゴ川に囲まれた一部のジャングルにのみ生息しています。

同じアフリカ大陸にて、35万年前の人間の骨がほぼ完全な状態で見つかりました。この人間の祖先とボノボは、骨格や二足歩行の仕方、手足のバランスなどがとてもよく似ているのだそうです。人類学では、二足歩行が道具の使用や言語、脳の発達の鍵となったと言われており、ボノボについての研究は人間の祖先を理解する上で非常に重要だと考えられています。

人間の言葉を理解できる唯一の動物・ボノボ

人間にもっとも近いDNAをもつ動物は、チンパンジーとボノボの2種類です。

チンパンジーに言葉を教えようという試みは四半世紀前から行われていましたが、一度も成功しませんでした。人間の指示を読み取ることはできるものの、それは視線や表情、体の動きを観察し、正解を導き出しているだけで、言葉を音声として耳で聞き取り理解することはできないのです。

ですが、ボノボであるカンジくんは言葉を耳で聞き、理解できます(17:00)。相手の表情や目の動きなどのヒントなしで、英単語を理解できるのです。動画内では、ヘッドフォンをしたカンジくんが聞こえてきた単語の写真を自ら選ぶ様子をみられます。

ボノボ・カンジくんはどうやって英語を覚えたのか?

カンジくんは、1000語以上の英単語の意味を理解し、英語で相手とコミュニケーションを取ることができます。

では、どうやってここまで英語を習得したのでしょうか?

はじめのうちは、アフリカから研究センターに連れてきたマタータというボノボに対し、言葉を覚えさせるための訓練がなされていました。その時カンジくんは生後間もなく、ずっとマタータと行動を共にしていました。

研究スタッフは、まだ小さくて覚えられないだろうとカンジくんには何も教えていなかったのですが、そのうちにカンジくんが自然と英語の意味を理解していることがわかったのです。その後も、会話の内容を理解していることがわかりました。

つまり、人間の赤ちゃんのように生後間もない頃から英語が飛び交う環境にいることで英語を習得したのです。

ボノボ・カンジくんの英語習得レベルは?

英会話をどれほど理解しているのかを調べる実験が行われました(24:00)。日常では使わないような指示をカンジくんに出し、その通りに行動できるかを試すものです。この実験では660もの文章が用意されました。ちなみに、指示を出す人の表情を読み取られないように、指示はマスクをかぶって行われます。

動画内でカンジくんが指示された文章はこちらの通り。

  • 犬に注射をして
  • 鍵を冷蔵庫に入れて
  • チャオ(固形食品)を外に出して
  • 外のボールを取ってきて
  • 靴を脱がして

これらのおよそ日常的には出てこないような文章を理解し、その通りに行いました。正解率は70%だそうです。

ボノボ・カンジくんはキーボードを使って自分の意思を伝えることができる


カンジくんは英語を理解し、行動できるだけではなく、自分のやりたいことを相手に伝えることができます。

研究チームは、250もの記号が書かれたタッチパネルを用意しています。記号を押すと、「apple(りんご)」「chase(追いかける)」「good(良い)」など単語や形容詞の音声が流れます。カンジくんはこのボードで自分の意思を相手に伝えることができるのです。

こちらの動画(2:15)では、「鍵のかかった今いる部屋から出て、自分の育ての母であるマタータがいる部屋に行きたい」と思ったカンジくんがボードの「Key(鍵)」「Group Room(みんなの部屋)」「マタータ」のボタンを押すシーンを見ることができます。

つまり「マタータのいるみんなの部屋に行きたいから鍵を開けて」という意思です。この意思表示により、無事にカンジくんは部屋を出ることができました。

英語の会話を理解できるのは、ボノボのカンジくんだけ?

じつは英語の会話を理解でき、コミュニケーションをとれるのはカンジくんだけではありません。妹であるパンバニーシャも言葉を理解し、ボードを使って意思を伝えることができます。遊びたい時は「ボール」を、ミルクが欲しい時は「ミルク」を、トイレに行きたい時は「おしっこ」のボタンをタッチします。はっきりと自分のやりたいことを相手に伝えることができます。

カンジくんとパンバニーシャは、生まれた時から研究室にいて言語に触れてきました。そのため英語を理解できるのです。一方で同じ環境で生まれたボノボは他にもいますが、研究のため言語に触れさせなかったボノボたちは、英語を理解することができません。

ボノボ・カンジくんは電話で会話を理解できる

カンジくんが、英語を耳で理解していることを示す実験があります。電話で会話し、その内容を記憶していることがわかったのです(11:20)。

動画を見ると、電話が鳴った時、最初は相手の姿が見えないのに声だけ聞こえるという状況にカンジくんも戸惑っていたようですが、次第に慣れ、相手の言っていることを聞くようになります。電話の相手は「あなたに会いに行こうと思うけど何が欲しい?」と聞きます。

カンジくんは「M&M(チョコレート)」「ボール」のボタンをタッチします。

4時間後、電話の相手がカンジくんに会いに来ました。そこでカンジくんに尋ねます。「何を話したか覚えてる?」と。

するとカンジくんは「M&M(チョコレート)」「ボール」のボタンを押したのです。

つまり、電話で相手の言うことを理解するだけでなく、過去にした約束を覚えていたということ。ボノボの知能のポテンシャルは計り知れません。

ボノボ・カンジくんはテレビゲームができる

テレビゲームは、私たちにも馴染みがありますよね。パックンというゲームを知っているでしょうか?

上下右左に自分のキャラクターを操作し、敵をよけながら迷路の中を動き回り、得点を稼ぐゲームです。カンジくんは、このゲームも行うことができます(16:30)。

器用にコントローラーを動かし、うまく敵をよけながら、キャラクターを操作できるのです。どうしたら敵をよけられるか?どうしたら得点を稼ぐことができるのか?といった複雑なルールもよく理解しています。

ボノボ・カンジくんは石器をつくることもできる

人間の祖先は、石と石をぶつけ合わせて尖った石器を作っていました。それにより、動物の皮をはぎ衣服として使ったり、獲物を割いたり、と生活を豊かにしていったのです。道具を作る能力があったからこそ、人類は発展していったと考えられています。

ですが、ボノボであるカンジくんも石器を作ることができます(26:30)。

二足歩行ができるボノボは、手先を器用に使うことができるようになりました。手を使うその様子は、人間とほとんど変わりません。

類人猿の中でも、ボノボは長い親指を持っており、繊細な力の加減をコントロールできる知能を持ちます。

カンジくんができないことは「発音・発声」

これだけ知能レベルが高いと、言葉も話せるのでは?と思ってしまいますが、カンジくんは言葉を発することは出来ません。

というのも、気管の構造上、人間のような言葉を発するのは困難なことだからです。人間は気管から出した空気を、舌や口の中の広さを調節することで様々な音を出しています。これは私たち人類が長い間二足歩行をする中で、舌が下がり、できるようになったことなのだそうです。

人間とボノボの仲介役をするカンジくん

動画の中では、言葉を理解できるカンジくんが言葉を理解できない妹のボノボ(名前はツムーリ)に、言葉を教えようとする場面が出てきます(35:10)。

博士がツムーリに「ツムーリ、カンジを叩いて」と伝えます。当然、ツムーリはなんのことかわかりません。しかし、隣にいたカンジが、ツムーリのことを叩いて見せたのです。まるで「ほら、ツムーリ、こうやるんだよ」と言っているかのように。

「カンジを抱きしめて」と言えば、カンジがツムーリを抱きしめます。「カンジの毛づくろいをして」と言えば、カンジはツムーリの手をとり自分の胸に当てます。

結局、博士の指示はツムーリには全く伝わらず、ツムーリはその場を離れてしまうのですが、カンジくんは「あぁ、行っちゃった」とでもいうようにツムーリのことを目で追いかけるのです。

この様子から、人間とボノボの仲介をしようとするカンジくんの優しい心を見ることができます。カンジくんは別の誰かに「教える」という行為までして見せたのです。

2018年現在、カンジくんはどうしてる?

天才カンジくんが、今どうしているのか気になったので調べてみたところ、今はACCI(The Ape Cognition and Conservation Initiative)というボノボなどの大型類人猿の保護施設に移ったようです。この施設はアメリカの中央部アイオア州デイモンにあります。

公式ページによると、今でもカンジくんはここで研究に励んでいるようです。こちらでもキーボードは使用されているようで、こんな記述がありました。

Kanzi is the most famous of the five bonobos at ACCI. He uses his keyboard to compose sentences from a set of over 500 lexigram symbols representing words and ideas.

訳:カンジはACCIにいる5匹のボノボの中でも最も有名です。彼は、単語やアイデアを表す500以上の記号が書かれたキーボードを使って文を作りだします。

ニュージャージー州の言語研究センターにいたころは、タッチパネルの記号は250ほどだったはずなので、それからさらにまた数百の単語を覚えたことになります。やはり、カンジくんは天才ですね。

He enjoys playing chase and using the lexigram keyboard to make choices and interact with his caregivers regarding his activities and meals for the day.

訳:彼はいつも、活動や食事をお世話してくれるスタッフと関わったり、意思を伝えるのにキーボードを使い、また追いかけっこを楽しんでいます。

カンジくんの説明にはこのような記述もあったので、今でも元気に暮らしているのでしょう。

残念ながら妹のパンバニーシャは、亡くなってしまったそうです。しかし、その血を受け継ぐ子供の「ニョタ」もACCIに移り、今でも会えるようです。ニョタについての説明はこちらの通り。

Nyota is the son of Kanzi’s late sister, Panbanisha. He was born in 1998 and is instrumental to research investigating cross-generational effects of language and culture. Nyota understands some spoken English and, like Kanzi, combines lexigrams to illustrate new ideas. He likes to wrestle and tickle Teco as well as play chase with the other bonobos. Nyota is our most thoughtful and gentle ape. His favorite food is celery and can usually be seen napping or sitting quietly under a blanket. He also enjoys picking flowers from the outdoor yards.

訳:ニョタはカンジの姉、パンバニーシャの息子です。彼は1998年に生まれ、言語と文化の世代間の影響を調査するための研究がなされています。 ニョタはいくつかの英語を理解しており、カンジのように、タッチパネルの記号を組み合わせて新しい考えを説明することができます。彼はティコ(同じ施設にいる2010年生まれのボノボ)とじゃれあい、くすぐり、他のボノボたちとも追いかけっこをするのが好きです。 ニョタはもっとも思慮深く穏やかです。彼の一番好きな食べ物はセロリで、通常は昼寝やブランケットの下に静かにくるまっている姿を見られます。彼はまた外の庭から花を摘むことも楽しんでいます。

とても平和に過ごしていることがわかりますよね。

説明にあるように、ニョタは、親が人間の文化と言語を理解していたという唯一の境遇を持ちます。それが彼にどのような影響をもたらすのか、気になりますよね。すでに英語も理解しているようですし、今後の活躍が楽しみです。

アイオワのラジオ番組のサイトにACCIを訪れたという記事がありました(2017年4月)。カンジくんやニョタの様子はこちらで見ることができます。

IPR’s Visit to the Ape Cognition and Conservation Initiative(IPR(IOWA PABLIC RADIO)によるACCIの訪問)

ヒトにもっとも近い類人猿・ボノボ「カンジくん」

ボノボの様子を見ていると、ヒトと動物の境界線がわからなくなってきます。

私たちは、日々、「悲しい」「嬉しい」「楽しい」などの感情と生きていますが、それはすべての動物に言えることなのかもしれません。少なくとも、ボノボのカンジくんを見ていると、人間と同様に自分の意思をもち、相手を思いやる心があるように思えてなりません。むしろ、人間よりも優しい心を持っているかもしれません。

ボノボについてを知ったきっかけとなった「ホモ・デウス」では、人間を人間たらしめているものは何かという問いに迫っています。人間についてより理解を深め、今後の展開を予想するという本ですが、非常に多くの気づきを得られるものとなっています。もしよければぜひ一読してみてください。





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