「貧すれば鈍する」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは、金銭的に貧しくなると、人は心までもが貧しくなり思考力が鈍くなる、ということを表したことわざです。
このことについて、ある心理学とお金の関係について述べられた書籍で、科学的にも証明されていることを知りました。今回は、そんなお金と私たちの心に関する内容です。
「貧すれば鈍する」とは?
「貧すれば鈍する」、読み方は「ひんすればどんする」です。貧は貧しいこと、鈍は思考力などが鈍ることを表しています。
まずは、ことわざの正式な意味合いを見ていきましょう。weblio辞書による定義は以下の通りです。
貧すれば鈍するとは、頭の回転が早く賢い人でも、生活が貧しくなってしまい金銭的な余裕を失ってしまうと心までもが貧しくなり判断力が鈍ったり知恵が衰えたりするなど、愚かな人間になってしまうという意味である。
どんなに人望や才能がある人でも、金銭的に困窮すると愚かな行動に出てしまうと言われています。
起源は不明ですが、現代にわたって語り継がれてきたことわざには重みがありますよね。
そして、今回初めて知ったのですが、この「貧すれば鈍する」は科学的に証明されていることらしいです。
引用する本の紹介
引用するのはこちらの本。クラウディア・ハモンド著「MIND OVER MONEY 193の心理研究でわかったお金に支配されない13の真実」です。
お金と人間心理にまつわる研究に基づいて書かれており、冒頭有名なアーティストが札束を燃やすところから始まるのでかなりインパクトがあります。興味深い調査研究が豊富なので、ぜひ手にとって読んでみてください。
お金の心配が知能指数を下げる<心理学調査>
インドのサトウキビ農家500人を対象に4ヶ月にわたって行われた調査があります。
このサトウキビ農家さんたちは、収穫期前になると金銭的に困窮し、収穫後は納品を終えて金銭的に余裕がある状態となります。
この農家さんたちに、収穫前と後、それぞれ1回ずつ認知機能テストを受けてもらいました。お金の心配がある時期と、ない時期にテストを受けてもらったわけです。
この結果、お金の心配というストレスが農家さんたちの認知能力に驚くほど影響したことがわかりました。
お金の心配がある時期に受けたテストのIQスコアは、お金の心配がない時期に受けたテストより9〜10ポイント低かったそうです。
9〜10ポイントとは、「卓越」しているから「普通」に、「普通」から「鈍い」に一段階下がるくらいの差です。お金の心配をすることで、これほどまでに能力は下がってしまうことがわかります。
「貧すれば鈍する」を証明するような報告は他にもあります。
今もらえる100万円と1年後にもらえる150万円
神経科学の分野から見ていきます。
人間の脳には、前頭前皮質と呼ばれる領域があります。これは、衝動的行動を抑制し、後々期待できる大きな報酬を辛抱強く待つことができる働きがあります。
わかりやすい例でいうと、「今100万円をもらうのと、1年後に150万円もらうのとではどちらを選びますか?」という質問です。論理的に考えれば、1年で50万円増えるわけですから、年利50%という破格です。ほとんどの人は後者を選ぶはずです。
しかし、この前頭前皮質がうまく機能していないと人はこの選択を誤るのだそうです。
前頭前皮質と慢性的ストレス
経頭蓋磁気刺激法と呼ばれる検査方法により、前頭前皮質の活動を抑えられた人は、将来の大きな報酬を待とうとしなくなり、今ここで何が手に入るかばかりを考えるようになることがわかりました。
そして、磁気刺激と同じ働きをする、つまり前頭前皮質が働くなる要因は慢性的なストレスであるとされています。
お金に関する心配は、その人に慢性的なストレスをもたらすと考えられます。金銭的に困窮したとき、人が法外な利息がつく短期ローンを借りてしまう理由がこれで説明できるかもしれない、と本書では語られています。
まだまだデータや調査研究が必要であり、因果関係を特定するのは容易なことではないものの、これまで見てきたように金銭的な慢性的ストレスが認知機能を下げ、視野狭窄をもたらすことが考えられると結論づけています。
まとめ
「貧すれば鈍する」ということわざに関連する興味深いデータや調査をご紹介しました。
まとめると
- お金の心配はIQの数値を一段階下げる
- 慢性的なストレスは前頭前皮質の働きを阻害する
ということです。
備えあれば憂いなしと言いますが、金銭的な余裕は精神的な余裕にも繋がります。余裕ある暮らしを作っていきたいですね。
それでは、今回も最後までご覧いただきありがとうございました。この記事がどなたかの参考になれば嬉しいです。